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小さくも重き肉片




しばらく顔を出していなかった

師匠のもとを訪ねた。



インディアンの方ではなく、

北海道での狩猟の師匠だ。



変わらない笑顔で迎えてくれる。



自分の動向を話し、

師匠の近況も聞かせてもらう。

話が弾む。



師匠を訪ねるときは

狩猟をしていて分からないことや

意見を仰ぎたいことを

事前に頭の中でまとめてから行っている。



私が質問をすると

大概のことは即答してくれる。



経験と鋭い洞察力から発せられる師匠の言葉は

どんな授業や講演会よりも面白く

いくらでも聞いていられるし、

実際に気付けばいつも

あっという間に数時間が経っている。



今回も色々な知識と気付きをいただいた。



帰ろうとすると、師匠が私を呼び止めた。



「これ持ってけ」と手渡してくれたのは

ヒグマの燻製肉だった。



師匠が見込んでいる若手ハンターが

今年獲ったオスのヒグマを

師匠がスモークしたものだ。



鹿は何頭も獲ってきたが

猟場では未だに姿を見たことさえないヒグマ。

新鮮な足跡やフンは何度も見ているので、

ニアミスは何度もあったはずなのに。



イヌの6倍とも言われるヒグマの嗅覚。

動かないと決めたら何時間でも動かず、

巨大な個体でもほんの少しのくぼみがあれば

ピタリと身を伏せ、完璧に隠れてしまうという。



何より鹿を撃つのと大きく違うのは、

ヒグマでは一つ間違えば自分の命を失うということ。

私にはまだ手が届かない。



小さな肉片だが

私にとってはとてつもなく重い。



そして、本当に美味しい。

鹿の魅力が赤身肉の旨味なら、

熊の醍醐味は脂。



噛めば噛むほど

芳醇な脂は染み出し、

ヒグマへの憧れも膨らむばかりだ。



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