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山に巡る血流

今年こそはと思い

ようやく挑戦したジャム作り。



至る所に蔦を這わせているヤマブドウだが

きちんと実を付けているものはあまりない。

今年は不作の年なのかもしれないが

私にはよく分からない。



たまに目の前にぶら下がっていると

早速味見。

野性的な酸味が爽やかだ。

ジャム作りにはこの酸味が肝要だという。

本格的に霜が降りると

ヤマブドウの糖度はどんどん上がり、

煮詰めても固まりにくく

味もボケたものになってしまうらしい。



ジャムにするなら

まさに今が旬。



しかしたまに

実を付けたヤマブドウを見つけても

低い所に実は殆ど無く

たわわに実っているのはいつも

手が届かない場所ばかりだ。



この目的の為だけに

高枝切鋏を購入したものの

遥か頭上のヤマブドウの下で

空を切るばかり。



そこでブドウの真下に車をつけ

屋根に登り

高枝切鋏伸ばす。

それでも届かないものは、

登れるところまで木に登り

下から鋏を渡してもらい収穫した。



帰宅後、房から粒を丁寧に外す。

母も楽しみながら手伝ってくれ

久しぶりの親子共同作業。




綺麗に水洗いしたヤマブドウは

美しく煌めく黒真珠のようだった。





それを鍋に入れ

水は足さずに弱火にかける。

柔らかくなりジワジワと果汁が出始め

さらにお玉で崩しながら火を通す。




少しずつザルにとり

すりこぎ棒で潰しながら

果汁をとる。




さらに搾りかすをサラシに包み

力一杯搾り上げる。




ポタポタと垂れていく

濃い赤紫の果汁は、

解体から少し時間の経った

鹿の血と同じ色に見えた。



そして握力が無くなるまで酷使した自分の手も

鹿の解体を終えた時と

同じ色になっていた。


撃たれた鹿の血は

土に吸い込まれ

森全体と同化し

巡り巡って

このヤマブドウに凝縮されたのだ。



そんなイメージが脳裏をよぎるが

科学的に見ても

あながち間違いではないように思う。



鹿を獲る。

ヤマブドウを採る。

山の命を有難く頂戴して

自分の血肉とする。

行為としても何も違わない。



1.2キロの果粒から

730グラムの果汁が取れた。

そこに300グラムほどの砂糖を入れ

ゆっくり煮詰めていく。



多分、甘さ控えめで

酸味の強いジャムとなっているはず。

朝のトーストに塗るか

鹿肉ローストのソースに合わせるか。



いずれにしても、楽しみでたまらない。

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