2021年3月13日
息を吸い続けることはできず、
いずれは吐かないといけない。
狩猟をはじめ、世界各地を旅し、
これまでの人生で色々なことを吸収してきたが
そうした体験や、考えてきたことを
皆さんと直接分かち合う
大変貴重な機会をいただいた。
いつも食べに行っている、
札幌駅北口の「ハヤシ商店」。
店長S、料理長Kの兄弟で店をやられている。
お二人とも狩猟に同行いただき、一緒に山を歩き、
鹿の止め刺しや解体なども体験していただいた。
3月13日土曜、そのハヤシ商店で
狩猟をテーマにお話しさせていただいた。
当初、15時からの一回を予定してたが、
ありがたいことに満席になり、
それでも参加希望のリクエストがあり、
12時からの回も設定して下さった。
週末は狩猟、
平日は仕事で、夜に狩猟の記事を書いているので
なかなか講演の準備ができなかった。
前日金曜日は久しぶりの徹夜。
何度もフリーズするパソコンに苦戦しながら、
パワーポイントのプレゼン資料が完成したのは
当日朝8時過ぎだった。
そのまま、トークで使うグッズとして
工作が得意な狩猟同好会メンバーが作ってくれた
完成したばかりの模擬銃を受け取りに行ったり、
解体時に使用する使い捨てゴム手袋を
ホームセンターに買い出しに行ったりと
色々な用事を済ませ、
会場のハヤシ商店に着いたのは
講演開始の30分前。
プロジェクターに画像が出ず四苦八苦し
ようやくパソコン画面がスクリーンに投影された時には
心から安心した。
狩猟を少しでもリアルに感じてもらいたいと、
ベルトにはナイフや胸骨切断用のノコギリをぶら下げ、
誤射防止の蛍光オレンジの帽子をかぶり、
迷彩ズボンにご丁寧に登山用のゲーターまで着用してみる。
徹夜明けの朝飯抜きで、非常に空腹であったが、
コンビニにおにぎりを買いに行く暇もなかった。
いつもバタバタ。
いつもギリギリ。
なんだかすっかりこれが日常となっているのだが
きっとそれは無意識に
自分で選んでいるライフスタイルなのだろう。
三日前から、同店舗では、私との狩猟に数回同行した
プロカメラマンHiroaki Okawara氏による写真展
“shooting a life”が行われている。
そして三週間前に店長Sと撃った
大きな雄鹿の頭骨標本も飾られている。
十数名のお客様と多数の鹿の写真、
そして思い出深い変形角の雄鹿に見守られながら
一回目の講演を始めた。
題目は以下の通り。
=ミキオが考える“ハンターの役目”=
=シカってどうやって獲るの?=
準備・追跡・射撃・解体・運搬の一連
=なんで狩猟始めたの?=
アラスカへ通い・インディアンとの出会い
=“肉を食べる”ということ=
分子生物学からチベット密教まで
=ハラハラドキドキ!狩猟エピソード=
鹿を二度死なせなかった日
決死の115m崖下り
未知の領域“熊撃ち”
天罰の筋肉断裂
好きなことを、好きなように話せる貴重な機会。
話は、狩猟の具体的な方法論にとどまらない。
私が師と仰ぐ、カナダ・ユーコンのインディアン、
キースとの色々な体験談。
インディアンの狩猟観。
食べた鹿が「血となり肉となる」とはどういうことなのか
持論を展開するにあたっては、
分子生物学の観点からの科学的なアプローチと
敬愛するダライ・ラマの講演会から得た宗教学の知見から
横断的に論ずる試みを行った。
初回の講演は、2時間半でタイムアウト。
具体的な狩猟エピソードを話すことはできなかった。
狩猟は一つの入り口であり、帰着点としては、
食べるとは、生きるとは、いのちとは、
といった根源的な考察に行きつきたいと思っていた。
私は鹿の命を正しく受け継ぎ、
それを伝えることはできたのだろうか。
殺めた命を、
皆様の心の中で再び生かすことはできたのだろうか。
初対面の方も多い中、
相当にディープな私見を語ることは
ある意味賭けでもあったが、
耳を傾けて下さっている時の皆様の目の輝き、
私の話を聞きながら
店から振る舞われた鹿肉を食べる時の表情からは
大きな手応えを感じていた。
休む間も無くお客様の入れ替えを始め、
そのまま15時からの回に突入。
結局、合計5時間もの間、話し続けた。
トークが終わり、夜からの店の営業に向け
お客様が全て退出される。
ガランとした店内で、
私の心は深く満たされていた。
その後、話を聞いて下さった方々が
残ってくれたり、戻ってきたり、
結局深夜まで皆さんと熱く語り合う。
徹夜明けということもあり疲労困憊だが、
気分は甚だ爽快であった。
狩猟では、厳しい山道を12時間以上歩き、
しかも後半は数十キロの荷物を背負って下山する
などということもよくあるが、
この日の疲労感と達成感は、
狩猟のそれととても似ていた。
どちらも大事で、どちらが欠けても物足りない。
今日一日、全力で走りきった。
今日一日、いのちを燃やした。
それを、最期の一日まで積み重ねる。
そんな一生を送りたい、と改めて思った。
そう、まるで鹿のように。
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