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初罠





初めて仕掛けた罠。



銃を持っての忍び猟は

多分に偶然の要素も強いが、

罠はよりシビアに

鹿の行動や身のこなしを

読み切ることが必要なのだと感じた。



設置した罠を丹念に隠し、

自然に見えるように細工するが、

どれだけ通用するものなのだろうか。





翌朝。

夜明けとともに罠をチェックしに山に向かうが、

シカが活発に動いている時間帯は避けた方が良いと思い直し、

次に罠をかけるポイントを思案しつつ、

キノコを探して回る。



去年はたくさんあったのに、

今年はあまり見かけない、

シーズン最終盤のラクヨウキノコ(ハナイグチ)。




肉厚でたっぷりと水分を含んだムキタケ。




いかにも美味しそうなヌメリスギタケモドキ。




図鑑には「食用」と載っているが

ネットでは「嘔吐・下痢に注意」とある、

少々物騒なツチスギタケ。




驚いたのが天然のエノキタケ。

色は黄色、傘は開き、柄の根元は茶色。

しかも全くヒョロヒョロしていない。

キノコに詳しい友人が全てを教えてくれる。




結局、午前中のほとんどをキノコ採りに費やし、

期待に胸を躍らせながら、

前日罠を仕掛けたポイントに向かうが、

そうそう簡単にかかるはずもなく、

罠の周りに足跡もなかった。



丁寧に土をかぶせてからそのまま、

私の罠は一晩じゅう、静寂を楽しみ、

翌日も昼まで眠り続けていたようだ。

安息の眠りが突如妨害され、

起き抜けに獲物の脚に食らいつく日が

早く来るといいのだが。



しかし、友人がかけた罠は、空弾きされていて、

驚いたことに、4ミリのワイヤーロープが引き千切られていた。

あまりにパワーにまずはヒグマを疑ったが、

ヒグマの足跡はない。

巨大なオスジカの、最も力のある後ろ脚の為せる業か。

これが、命の持つ底力なのだろう。









結局、鹿は獲れなかったが、

キノコがたくさん入った汁を堪能。

ラクヨウは安定の美味しさ。

ムキタケは淡白でフワフワのハンペンのよう。

ヌメリスギタケモドキはぷりぷりのナメコ。

ツチスギタケはほのかな土の香り。

エノキタケはシコシコした歯応えが抜群。



極めて贅沢で美味な晩ご飯であった。


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